「醸造家の死」

今年は6月に富永教授 そして9月にディディエ・ダグノー氏と私の知っている二人の著名な醸造家が亡くなりました。お二人ともそれほど懇意にして頂いた訳ではありませんが、面識もありご冥福をお祈りするばかりです。

不思議なことに二人に直接共通している訳ではありませんが、何か因縁めいた事を感じないわけにはいきません。

1、富永 敬俊(たかとし)氏は51歳、ディディエ・ダグノー氏は52歳でした。
2、お二人ともソーヴィニョン・ブラン種に深く関わっていられました。
3、ボルドー大学のドゥニ・ドゥブルデュー教授と関わっていられました。


富永氏と初めてお逢いしたのは随分前でおそらく25年くらい前になるのでしょうか?現在メルシャン(株)のチーフ・ワインメーカーを務めていらっしゃる味村氏とよく六本木のワインバーへいらっしゃており、度々ご一緒にワインを飲む事がありました。
当時は単なるワイン好きの学生としか思っていなかった彼が、ボルドー大学で教授にまでなられデュブルデュー教授の右腕とまで言われるようになるとは本当にびっくりとしました。


2年ほど前に彼の研究に基づいて産み出されたシャトー・メルシャン きいろ香の白ワインの試飲会でお久しぶりにお逢いしたのが最後となってしまいました。


もっともっと研究成果やボルドー・ワインについてお聞きしたかったのに残念です。 ディディエ・ダグノー氏と初めてお逢いしたのは今から6、7年前のボルドー・ヴィネスポの時でした。その期間中に当時は珍しかった自然派の特別試飲会がシャトーベレールのセラーであるという事で参加させて頂いた時にブースを出していました。


総勢15名くらいですが今をときめく生産者が集まっており、彼は特に人気があったようで多くの人が集まっていました。ですから簡単なご挨拶と噂に違わぬ野人の風貌しか覚えていません。


もちろん彼のワインはずーと扱っておりましたが、何しろ限定の入荷数なのでご予約のお客様で毎年完売となり最近はオン・リストも出来ない状態でした。


私が強く印象に残っているのは輸入元の方が彼を始めて尋ねた時の質問です。
挨拶もそこそこに彼はワインを樽から飲みながら言ったそうです。
「ワインにとって大切なことを3つあげよ。」


それから数年して東京でやはりロワール・ワインきってのオーナードゥ・ラドセット男爵とランチがありました。
「君はまさかディディエ・ダグノーのワインを扱っていないよね?」
「いえ 数は少ないですが扱ってますよ。」
「本当か?あんな奴のワインを売っているのか?」
「だって美味しくて、お客さんから要望があればいいじゃないですか。」



男爵はその後も彼の悪口を言っていてランチは台無しになりました。会社に帰ってからも1日中悪口を言っていたそうです。

男爵はダグノー氏の個人的な好き嫌いの問題ではなく、フランス社会の階級観を垣間見たような気が私はしました。今でもそう思っていますが、その後もちろん男爵とはその話はしていません。

(2008年9月29日更新)


Copylight (c) 2000-2013 Liquor Shop Ai


株式会社 リカーショップ愛  東京都中央区日本橋小伝馬町19-3 池田ビル3階
TEL. 03-5643-5237 FAX. 03-5643-8526
電話でのお問い合わせは午後0時〜午後5時までとさせていただきます。
リカーショップ愛は通信販売酒類小売業免許を付与されております。